EMでもPdMでも、いま必要なのは「翻訳」スキルだと思う
株式会社Unitoでは Product Manager と Engineering Manager を兼任しています。肩書が二つあるほど痛感するのは、同じ単語が部門ごとに意味が違うことです。「優先」「リリース」「ユーザー」「技術的負債」。会議が長い原因の半分は、定義のズレが見えないまま熱量だけが積み上がることだと思っています。本稿では、意思決定の前に置く翻訳の型と、現場で使った問いを整理します。海外のプロダクト組織論では、チームに意思決定権を持たせる考え方が流通しています(SVPG)。チームの相互作用を整理する枠組みも参照されます(Team Topologies)。私はそれらをそのまま輸入するより、言葉の解像度を上げる道具として使いました。 兼任は「橋渡し役がいるから回る」というより、橋がないと誰も渡れない構造を可視化する仕事に近い。
事業側の「優先」は売上やコミット寄り、プロダクトの「優先」は学習やインパクト寄り、エンジニアリングの「優先」は持続可能性とリスク寄り、と雑に言い切ると怒られます。でもズレの方向はだいたいこの型に収まります。兼任の妙は、同じ会議室で三つの方言が同時に飛ぶ場面で痛感します。私の仕事の半分は、意思決定そのものより先に、単語の辞書を一枚共有することに置かれている気がします。
翻訳がない会議で起きること
同じ語が、腹を立てさせる理由
「リリース」が、事業では日付、プロダクトでは学習の区切り、エンジニアリングでは本番投入のリスク管理、を指す。定義が見えないまま熱量が積み上がると、会議は長くなります。私は論点が刺さらないとき、まずどの言語の争いかを口に出します。
翻訳は「正しさ」ではなく「合意の短文化」
正しい日本語に直すのではなく、次の一週間で何をするかに接続する。翻訳が成功したかどうかは、会議後のタスクの曖昧さで測れます。
非同期と同期の境界
文章は誤解を増幅する
火種になったスレでは、まず短い同期を十分だけ挟むルールを試しました。時間はかかります。後からの手戻りより安いことが多いです。
責任の輪郭を週次で言い直す
兼任でも、停止権限と優先順位の決定権を、週次で一度だけ言い直すようにしました。儀式に見えたら、「境界の再描画」と呼び換えてください。
私がやらかした翻訳サボり
定義合わせを飛ばした週は、一週間楽でした。翌週、地獄でした。楽な週の値段は、後払いです。
笑いが戻るのは、定義が揃ったあと
緊張した会議ほど、最後は笑いが要ります。笑いは慰安ではなく、同じ皿を見ている確認です。
まとめ
兼任は忙しいです。それでも、言葉を揃えるほど実装の迷いが減ります。次の一歩として、来週の定例の冒頭で「この単語の定義を30秒で言い換えて」と一人ずつやってみてください。笑いが出たら成功です。現場のあなたを応援しています。
仕上げのための自問(現場メモ)
記事にするほどではないが、私が自分用に残している自問です。全部に答えなくてよいです。
いまの議論は、次の一週間の行動に落ちるか
落ちないなら、まだ抽象度が高い。
反対意見を一行で言語化できるか
言えない反対は、ただの不安であることが多いです。
休む予定を入れたか
持続可能性はスローガンではなく、カレンダーの実装です。
参考・出典
- Silicon Valley Product Group, Empowered Product Teams, https://www.svpg.com/empowered-product-teams/ (参照: 2026-04-06)
- Team Topologies 公式, https://teamtopologies.com/ (参照: 2026-04-06)
- Amy C. Edmondson, Psychological Safety, https://amycedmondson.com/psychological-safety/ (参照: 2026-04-06)
- 本記事は個人の経験に基づき、役割定義は各社で異なります。